大森靖子の描く歌詞の魔力の話
(以下敬称略)
だから、大森靖子について書いてみたいと思った。
何回かに分けて不定期に書いていこうと思っている。
[AD]
出会いはYouTubeでたまたま『イミテーションガール』のMVを見たことだった。
それがいつ頃のことだったかは定かではないけれど、確かに学生時代だったと思う。
“頑張ってる左手 余裕のファックアンドピースつよい右手
頑張ってるからなんなの”
“手首のテープを返して かくしてるんだからいいでしょ
ハゲかくしよりマシだし 嫌いにならないで”
“似合わない街にいこう 睨まれて帰りたいな
ぼくの世界をつくろう ぼくだけのぼくのへや”
[引用元]
http://j-lyric.net/artist/a058578/l033d76.html
衝撃的だった。
こんなに可愛らしく自傷行為を描けるものか。
当時のわたしは自傷行為とは無縁だったはずだけれど、【生きづらさ】というものは毎日感じて生きていた。
「冷たい」
「余計な一言が多い」
「苛立たせる言い方をする」
「貴女は独りでも平気でしょ」
そんな言葉で親には怒られ、大好きな友人で溢れる部活(漫研)では自分の技術の未熟さと無力さを痛感する。
高校生と言えばもう10年近く前になるが、当時のわたしはジェンダーレスになりたかった。
それが女の特権だと思って、時に男物の服を来てメンズになっては、フリフリのスカートを履いて女の子になった。
当時のバイブルは、あのきゃりーぱみゅぱみゅを輩出した、かの界隈での必読書『KERA』だった。
そうして親の言うまま大学に上がってみたが、気の置ける友人などほとんど出来なかった。
気づけば、趣味だった絵や小説を書くこともやめていた。
そんななか出逢った大森靖子という天才。
闇をピンク色に描く天才。
あっという間に虜だった。
当時、アニソンや声優ソング以外好きだったのは相対性理論とやくしまるえつこだった。
ちらほらBaseBallBearやサカナクションなどの邦ロックも聴いていたけれど、それを差し置いて大森靖子になった。
聴けば聴くほど虜になる闇の中のピンクの光。
“ディズニーランドに住もうとおもうの
ふつうの幸せにケチつけるのが仕事
まずずっと愛してるなんて嘘じゃない
若いこのとこにいくのをみてたよ
ミッキーマウスは笑っているけど
これは夢”
“やっぱ郊外に住もうとおもうの
誰にもふたりみつからないように
ディズニーランドに行ったって
幸せなんてただの非日常よ
一週間お風呂は禁止
そのあとほらねわかるでしょ”
[引用元]
http://j-lyric.net/artist/a058578/l033d76.html
これは『絶対彼女』という歌詞の引用だが、この曲で大森靖子は彼女が愛してやまない桃色のうさぎ・道重さゆみとコラボした楽曲をついに発表した。
コラボ楽曲では一部の歌詞が変えられている。
“ナチュラルに生きて好かれたい
そんなの あたりまえ前提
ファビュラスマットなガチ赤リップも
これが私 きらめくの”
”ディズニーランドに行ったって
幸せなんてただの非日常よ
一週間楽しい持続できない
イライラに負けちゃう
新しい気持ちをあげるよ 何度も幸せつくるの
ディスったやつの家に薔薇の花束を毎日贈るの“
[引用元]
https://www.lyrical-nonsense.com/lyrics/seiko-oomori/zettai-kanojo-feat-sayumi-michishige/
なぜ変えたのかは調べておらず回答し損ねるのだが、いまディズニーランドにはホテルが多くあって入浴くらいできるからだろうか。
それとも、入浴できないストレスよりも【夢の国にいようが慣れて日常になってしまえばストレスからは逃れられない】という隠喩か。
いずれにしても、ディズニーオタクのわたしだが、大好きな歌詞である。
そして、大森靖子はこの曲で、別の曲の中で表現していた自らの歌詞を体現したのである。
”アンダーグラウンドから 君の指まで 遠くはないのさ
iPhoneのあかりをのこしてワンルームファンタジー
黒髪少女で妄想通りさ 君だけがアイドル
“いつまでも大きい瞳で大丈夫な日の私だけをみつめてよ“
[引用元]
http://j-lyric.net/artist/a058578/l033d76.html
と『ミッドナイト清純異性交遊』で道重さゆみに宛てて歌っていたが、あっという間に求めた指に届いてしまった。
ファンという立場であれば、大森靖子は精力的に活動し、手を、指を伸ばしていた。
しかし、今度は。今度ばかりは。
アーティストとしてついに指切りをしたのだ。
純粋に凄い人だ。
闇の底にいた彼女は、峯田和伸(銀杏BOYZ)によってアンダーグラウンドへ掬い上げられ、ついにはそのアンダーグラウンドから這い上がり、スポットライトを浴びてアイドル(ZOC)をしている。
しかもだ。
恩人と言われる峯田和伸とコラボも果たしたのだ。
大森靖子feat.峯田和伸『Re: Re: Love』Music Video
これが大森靖子なのだ。
《私信》
敬愛する大森靖子さま。
これからもどうか、わたしを救い続けてください。
貴女がいるから、貴女が描き出すセカイがあるからわたしは生きています。
闇の中で蠢くように生きています。
敬愛する大森靖子さま。
大好きです。